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第201回演奏会のご案内

飯守—シューマン交響曲全集完結
 シューマンはピアノ曲、歌曲および室内楽曲などにおいて健全なロマンあふれる多くの傑作を残していますが、晩年(と言っても40歳台で亡くなったのですが)は精神を病んで悲惨な最期を遂げたことでも有名です。そんなことからも、もえたぎる情熱を内に秘めた多面的性格の持ち主だったことが想像されます。完成された交響曲は4曲あり、若さあふれる第一番「春」、狂気が垣間見られる第二番、自由奔放な第三番「ライン」そしてベートーベンの交響曲第五番を思わせる緊密な構成の第四番とそれぞれ個性の異なる傑作ぞろいです。
 新交響楽団では、シューマンに関して深い見識を持つ飯守氏のもと、これまでに第三番、第二番そして第四番の順番でとりあげてきました。どの演奏もシューマンの感情の襞を見事に表出した名演として聴衆の皆様から高い評価をいただいています。今回取り上げる第一交響曲は「春」と名づけられているように大変に明るい気分の交響曲です。シューマンの苦悩や狂気はほとんど感じられず、若々しい情熱がほとばしっています。まさに春の季節にふさわしい曲と言えましょう。飯守-新交響楽団におけるシューマン交響曲の締めくくりです、どうかご期待ください。

爛熟!究極のロマンティシズム
シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」

 シェーンベルクというとメロディーも協和音も無い、砂を噛むようないわゆる“ゲンダイオンガク”の創始者と考えている方も多いのではないでしょうか。しかしながら、20代までの彼の曲は爛熟を極めたロマンティシズムにあふれています。それはワーグナーやマーラーをもはるかにしのぐ濃厚さです。今回取り上げる交響詩「ペレアスとメリザンド」もその時代の傑作です。転調を繰り返しながらつながってゆく長い旋律線はワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」を、また、一見脈絡のなさそうな複数の旋律を重ねることで屈折した感情を表現するあたりはマーラーの交響曲第9番の第1楽章を思い起こさせます。そして、それらの中にシェーンベルク独特のキラキラと光る宝石のような、そして思わずため息が出てしまうような美しい瞬間がちりばめられています。
 この交響詩で取り上げている題材は、フォーレの劇音楽やドビュッシーの有名なオペラにも取り上げられているベルギーの作家メーテルランクの戯曲です。「王子ゴローはあるとき森にいた謎の娘メリザンドを見つけて城に連れ帰り妻にするが、メリザンドはゴローの弟ペレアスと惹かれあってしまう。ゴローはそれに気づき嫉妬に狂い、ペレアスとメリザンドの逢引きに乱入してペレアスを刺殺、メリザンドは城に連れ戻されるが傷心のうちに亡くなる.」 という粗筋です。全体を貫く雰囲気は大きく異なりますが、道ならぬ恋愛という点では「トリスタンとイゾルデ」に共通する要素を見出すことも可能でしょう。シェーンベルクはフォーレやドビュッシーとまったく異なる雰囲気の響きを作り出し、ペレアスとメリザンドの恋愛をまるでトリスタンとイゾルデの恋愛のように濃厚かつ官能的に、また最後は弟を殺してしまうゴローの苦悩と嫉妬を執拗にそしてどす黒く表現しています。
 前回新響に登場した2006年11月には驚異的なカリスマ性で新響を導き、トリスタンとイゾルデでの名演を成し遂げた飯守氏のもとで再びどんな名演奏が生み出されるのか、ぜひともご期待ください。

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