第209回演奏会のご案内
飯守泰次郎 ~ ドイツの響き
飯守は2つのプロオケの常任指揮者を務める日本を代表するマエストロです。様々な賞を受賞するなど社会的にもその活躍が認められており、円熟したタクトから出される「何か」がオーケストラをひとつの有機体にし音に命を与えます。新響は1993年以来、年に1~2回のペースで共演しその音楽に魅せられてきてました。ドイツでの活動歴が長い飯守との2年ぶりの共演となる今回のプログラムには、ドイツ・オーストリアのロマン派の名曲をそろえました。
特にブルックナーは初共演で交響曲第4番を演奏し、その後第8番、第7番、第8番と共に演奏してきた大切なレパートリーであり、いよいよ「とっておき」の第9番を取り上げます。
ブルックナー ~ 神に捧げられた第9番
オーストリア・リンツ近郊に生まれたブルックナーは、修道院に学んだ後、教師をしながら研鑽を積み、オルガン奏者として大成します。並行して38歳まで作曲のレッスンを受け続け、教会のための作品の数々を残す一方でオルガンの響きを連想させる壮大な交響曲を書きました。44歳でウィーン音楽院教授となり、60歳で交響曲第7番の成功によりようやく認められた遅咲きの作曲家でした。
交響曲第9番はブルックナー最後の作品です。62歳から書き始められましたが、直前に完成した第8番や過去の作品の改訂に手間取り、本格的に作曲に取り組む頃には病気で体調が悪化、70歳の時ようやく第3楽章まで完成します。その前年に遺言書を作成しているのに加え、「生からの別れ」と自ら呼んだテーマが第3楽章に登場するなど、迫り来る死が確実に意識されています。72歳で亡くなる日の朝まで最終楽章の作曲を続けましたが、未完に終わりました。
残された資料から第4楽章の補作が試みられたり『テ・デウム』が代用されることもありますが、完成している3つの楽章で内容の充実したひとつの作品となっており、美しく神々しいアダージョで静かに終わります。
『未完成交響曲』と言えばシューベルト
シューベルトの交響曲第7番『未完成』は、親しみやすく美しい旋律の有名曲で、ご存じの方も多いでしょう。
ウィーンに生まれたシューベルトは、13歳で作曲活動を開始、19歳で自作が出版され作曲料を得るようになりました。26歳の時にシュタイアーマルク音楽協会の名誉会員に推薦されたお礼として贈ったのが第2楽章までの第7番でした。しかしこの曲はその後発表されることなく、シューベルトは31歳の若さで病気で亡くなります。楽譜が発見され初演されたのは、作曲者の死後37年も経ってからでした。
未完のまま次の第8番「グレート」が作曲されていますから、絶筆でありません。なぜ未完のまま放置されたのか理由は諸説ありますが、完成された第1、第2楽章だけでも十分に存在感があり、残された第3楽章のスケッチを見る限り、素晴らしい2つの楽章に釣り合う続きを書くのが困難になったのかもしれません。
2つの未完成交響曲。創造の過程も未完に終わった事情も全く異なりますが、どちらも美しく感動的な傑作です。飯守+新響の演奏に、どうぞご期待下さい。