第211回演奏会のご案内
ブラームスはお好き?
人それぞれかもしれませんが、オーケストラの演奏者にブラームス嫌いはいないのではないでしょうか。彼の作品は、我々にとって演奏することに喜びを感じる大切な宝物です。
ブラームスはドイツロマン派の作曲家で4つの交響曲を残していますが、第1番は19年かかって作曲され、続く3曲も非常に完成度の高いものとなっています。今回演奏するのは最後の交響曲である第4番。ブラームス53歳の時の作品です。すでに音楽界の重鎮となっていましたが、孤独で質素な生活を送り、シューマンの未亡人クララに想いを寄せながらも独身を通していました。そんな人生への切なさが感じられる傑作です。
ワーグナーやマーラーといった一歩先を行く作曲家と同時代でありながら、ブラームスは古典主義的な形式を尊重しました。特にこの第4番では古典的なソナタ形式をとり、フリギア調(古い時代の教会旋法の一つ)やシャコンヌ(バロック時代の3拍子舞曲の形式。短い主題に次々に変奏が展開される)を用いるなど、古めかしくも独創的です。内に秘めた感情が聴く者の心を揺さぶる、もっともブラームスらしい曲といえるでしょう。
この交響曲第4番は1885年、マイニンゲン宮廷管弦楽団でブラームス指揮により初演されましたが、このときトライアングルを担当したのがこの楽団の副指揮者をしていた21歳のリヒャルト・シュトラウスでした。
若き日のリヒャルト・シュトラウス
R.シュトラウスは20〜30代の時に「交響詩」と呼ばれる標題のついた作品を数多く作曲しました。今回演奏する『死と変容』もその一つです。
85歳で亡くなる直前まで指揮や作曲を続けていた長寿のシュトラウスでしたが、若い頃は病弱で、たびたび大病を患いました。死に直面したことのある自身の心境を曲にしたといわれています。床に伏した病人が、死の恐怖と戦いながら、幸福だった子供時代や理想に燃えた青年時代といった過去を回想し、闘病の末に天国へ行くという内容です。
R.シュトラウスの交響詩の中でも人気のあるる荘厳で美しい曲です。
権代敦彦〜現代の宗教音楽家
新響はこれまでに多くの日本人作曲家の作品を演奏してきましたが、今回は1965年生まれの権代敦彦の作品を取上げます。カトリック信仰に基づく宗教的な作品を数多く発表していますが、近年は仏教音楽との交流から新たな境地を開拓しています。今回演奏する『ジャペータ-葬送の音楽I』もそうした一つで、仙台フィルハーモニー管弦楽団の委嘱作品として、2007年に山下一史指揮により初演されました。「現代音楽の演奏は同時代人としての指揮者の使命である」と言う山下が期待する若手作曲家です。
ジャペータjhapetaとは、「火葬する」という意味の古いインドの言葉で、「荼毘」の元になっています。
どうぞご期待下さい。(H.O.)