第213回演奏会のご案内
ドヴォルザーク=ボヘミアのブラームス
今回は指揮に飯守泰次郎を迎え、久々の東京文化会館での演奏会です。飯守は正統派ドイツ音楽の巨匠ですが、スラブ系の曲も得意としています。今回はその中でチェコの大作曲家ドヴォルザークの交響曲第7番を取り上げます。
ドヴォルザークといえば「新世界」交響曲があまりにも有名ですが、この第7番は絶対音楽的な性格が強く、形式的にも古典的な構成で、9つの交響曲の中でもっとも交響曲らしい作品です。ブラームスの交響曲第3番の影響が強いといわれていますが、ドヴォルザーク独特の素朴で温かな響きを持ち民族的な要素も散りばめられている魅力的な曲です。
ドヴォルザークとブラームスの友情
ドヴォルザークは肉屋の長男で家業を継ぐはずだったのですが、修業先の学校で音楽を学びプラハのオルガン学校に進みます。卒業後はヴィオラ奏者や教会オルガニストをしながら貧しいなかで作曲を続けていましたが、34歳から5年間オーストリア政府の奨学金を得ることができました。その審査員だったのがブラームスでした。ブラームスの推薦により出版社の契約作曲家になることができ、ドヴォルザークは世界的に認められるようになります。その後も二人の交流は生涯続きました。
ブラームスの円熟期の名曲
演奏会の前半では、ブラームスのもっとも脂ののった時代といわれる45歳前後に作られた2曲を取り上げます
大学祝典序曲は、ブレスラウ(現ポーランド・ヴロツワフ)大学から名誉博士号を贈られたお礼として書かれた曲です。その少し前にケンブリッジ大学から名誉博士号を贈りたいと通知があったときは、イギリスに出かけて儀式に参加することが条件だったので断ったのですが、こちらは面倒な条件がなく祝典曲を作曲してくれればありがたいということだったので称号を受けたのでした。4つの学生歌が引用された陽気でユーモラスな曲です。そのうちの1つ「新入生の歌」がファゴットのメロディで演奏されますが、この部分はラジオの大学受験講座のテーマ曲に使われたので特に有名です。
ブラームス唯一のヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェン、メンデルスゾーンの作品とともに「三大ヴァイオリン協奏曲」と称され、ブラームスらしい重厚な交響的な響きがする大作です。最初は4楽章で構想されていましたが、ブラームスの友人の名ヴァイオリニストのヨアヒムとのやりとりのなかで、伝統的な3楽章形式の曲は完成し、初演もヨアヒムが独奏をつとめて大成功を収めます。その後もヨアヒムやその弟子たちが何度も演奏し、この曲の存在感が高まりました。
ヴァイオリン独奏には、松山冴花を迎えます。世界から実力者の集まる仙台国際音楽コンクールで優勝し、ニューヨークを本拠地に演奏活動をしていますが、日本でも数々のオーケストラと共演をしています。
飯守の奏者に求める完成度は非常に高いものがありますが、それに応え作品への共感に満ちたものとなるよう、心をこめて演奏いたします。どうぞご期待ください。(H.O.)