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第218回演奏会のご案内

「巨人」―マーラーの青春の交響曲
 ウィーン音楽院を優秀な成績で卒業したマーラーは、20歳で指揮者としてのキャリアをスタートするとその後は引く手あまたで、各地を渡り歩いていました。交響曲第1番が作曲されたのは、歌劇場のソプラノ歌手に失恋したり、未完のオペラの補筆を依頼したウェーバーの孫の夫人との不倫騒動があった頃で、若き日のマーラーの苦悩や希望が現れています。
 元々この交響曲第1番は5曲からなる交響詩として作曲され、その時の標題が「巨人」でした。これはドイツの作家ジャン・パウルの長編小説の題名に由来し、主人公の青年がさまざまな経験を経て人格が形成され最後は王座につくというストーリーです。この交響詩の各曲には次のような副題がついていました。第1部<青春の日々より> 1:終わりなき春、2:花の章、3:順風に帆を上げて、第2部<人生喜劇> 4:座礁(カロ風の葬送行進曲)、5:地獄から天国へ。自身が4楽章の交響曲に改編した際に「花の章」を削除、標題や副題も破棄されましたが、今でもニックネームとして残っています。
 ウィーン音楽院の学友でライバルであったハンス・ロットがなくなったのもこの頃でした。ブルックナーの弟子であった彼は、自作の交響曲をブラームスに酷評され精神に変調を来たしてしまいました。ロットのこの曲はマーラーの音楽に影響を与えており、特に交響曲第1番のスケルツォはよく似ています。
 初演後に描かれた風刺画には、マーラーの吹く巨大な金管楽器から様々な動物が飛び出しており、センセーショナルであったことが覗えます。葬送行進曲の旋律を独奏コントラバスが弾いたり、最後はホルン7本が立って演奏するなど、現代でも十分に斬新な曲です。


ヴァイオリン協奏曲の王様
 ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、ブラームス、メンデルスゾーンの作品とともに「三大ヴァイオリン協奏曲」と称され、傑作の森とも呼ばれるベートーヴェン中期を代表する作品の1つです。同じ頃に作曲された交響曲第4番やピアノ協奏曲第4番と同様に明快で叙情的な曲です。曲の素晴らしさからヴァイオリン協奏曲の王様とも評されています。
 ソリストには、ニューヨークを本拠地とし、日本でも数々のオーケストラと共演している松山冴花を迎えます。昨年新響&飯守泰次郎とブラームスの協奏曲を共演し、瑞々しく感情豊かな演奏を聴かせ、その音楽性に団員も魅了されました。
 この演奏会でまた魅力的な演奏をしてくれることを期待しています。
 どうぞお楽しみに!(H.O.)

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