第223回演奏会のご案内
■フランス物の名手、矢崎彦太郎
矢崎は1947年生まれ、上智大学数学科に学んだ後に東京藝術大学の指揮科を卒業、ヨーロッパに渡り研鑽を積み、1979年からパリに拠点を移し世界各地で活動をしています。
日本においては2002年から東京シティフィルの首席客演指揮者を務め、長年にわたる日仏音楽交流への貢献に対しフランス政府より芸術文化勲章を授与されています。柔らかな指揮から色彩的な音楽が奏でられます。
■今年はプーランク没後50年
プーランクは1899年パリ生まれ、父は敬謙なカトリック教徒の家系、母は生粋のパリジェンヌであり、軽妙で洒落た音楽と厳かな宗教音楽の双方を併せもつ作風で知られています。今回の演奏会では動物の登場する明るく楽しい2曲を演奏します。ともに、徴兵されたプーランクが休戦により戦地から戻った1940年に着手されています。当時フランスはドイツ軍の占領下にありました。
「モデルは動物たち」は、日本では一般的に「典型的動物」「模範的動物」と呼ばれている曲です。直訳で何のことだかわかりにくく、堅苦しい語感からかあまり日本では演奏される機会がありませんので、新響は「モデルは動物たち」として紹介することにしました。17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌがイソップ物語を元に書いた寓話から6つの話を選んで作ったバレエで、後に組曲に再編したものです。寓話とは動物などを擬人化した教訓的なたとえ話で、この曲にはライオンや雄鶏が登場しますが、動物をモデルにして人間の出来事を物語にしただけでなく、フランスをそれらの動物に見立て、フランスが希望を持てるようにという意図が隠されています。
「ぞうのババール」は、1931年に発表され人気を博した絵本で、プーランクは親戚の子供たちが夢中になっているのを見て、ピアノと語りのための音楽を作曲しました。ババールは洋服を着て2本足で歩く擬人化された象で、猟師に母を殺されジャングルから逃げてパリへ行き、老婦人と友達になって平和に暮らすが、故郷を思い出し森に帰って象の国の王様になります。古き良き時代のフランスを懐かしむかのような物語を、プーランクは愛情に満ちた音楽で魅力的に表現しています。今回は、のちにフランセが編曲した管弦楽版を語りに中井美穂を迎え演奏します。
■ショーソン-フランス・ロマン派の傑作
ショーソンは1855年パリ生まれ。父親の意向で法学を勉強し弁護士に任命されますが、その後パリ音楽院でマスネやフランクに学びます。毎年バイロイトに出向くワグネリアンでもありました。ショーソン唯一の交響曲は、フランクのそれと同じ形式で、明るくフランス的エスプリを感じる曲です。44歳で別荘の門柱に自転車で激突して亡くなり、残した作品が少ないのは残念です。
どうぞお楽しみに!(H.O.)