第231回演奏会のご案内
ウィーンにこだわる指揮者 寺岡清高
今回の演奏会では、指揮に寺岡清高を初めて迎えます。早稲田大学文学部を卒業後、桐朋学園大学を経て1992年よりウィーン国立音楽大学指揮科で学びました。早稲田大学交響楽団ではコントラバスを演奏していましたが、指揮者への想いを断ちがたく専門家への道を目指しました。今はウィーンに在住し、ヨーロッパ各地のオーケストラに客演するほか、2004年からは大阪交響楽団の正指揮者に就任し現在は同楽団常任指揮者を務めるなど、国内でも活躍しています。
その音楽への情熱と真摯なアプローチから紡ぎ出される音楽は、説得力を持って心に響きます。
世紀末ウィーンといわれる19世紀末から20世紀初頭に作られた音楽、特にマーラーや新ウィーン楽派の陰に隠れたシュミットやハンス・ロット、ツェムリンスキーなどの曲を積極的に取り上げるなど、ウィーンにこだわった活動をしています。その寺岡との初めてのコンサートに、ウィーンにちなんだ3曲を選びました。
ウィーンゆかりの名曲を2曲
ニコライは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の創設者としても知られています。「ウィンザーの陽気な女房たち」はシェイクスピアの書いた喜劇。主人公である大食漢の老騎士ファルスタッフは、同じくシェイクスピアの「ヘンリー4世」の登場人物で、エリザベス女王が気に入り「彼の恋物語を見たい」と書かせたのがこの戯曲と言われています。勘違いして2人の裕福なご婦人に言い寄るも、逆に懲らしめられてしまいます。この喜歌劇はウィーンフォルクスオーパーの十八番でもあり、美しい旋律の軽快で明るい序曲は、演奏会にもよく登場します。
音楽の都ウィーンと言えば、やはりベートーヴェン。9つの交響曲を書いていますが、記念すべき第1番は29歳の時、七重奏曲やピアノソナタ「月光」などと同じ時期で、すでに人気作曲家となったベートーヴェンが満を持して書いた作品。同じウィーンのハイドンやモーツァルトといった古典派の技法を取り入れつつ、独自の意欲的な試みもみられ、若々しく生き生きとした交響曲です。
後期ロマン派最後のシンフォニスト
そしてフランツ・シュミット。シェーンベルクと同じ1879年の生まれで、シェーンベルクが12音技法の道に行ったのとは対照的にいかにもロマン派的な交響曲を4つ残しており、古風な面と斬新な響きを併せ持っています。シュミットはウィーン音楽院にて作曲とチェロを学び、ウィーン宮廷歌劇場のチェロ奏者を務めていました。
今回演奏する第4番は、シュミットの一人娘が亡くなり追悼のために書かれた作品です。哀愁のある旋律が魂を揺さぶり、リズムが胸を打ちます。
作品は素晴らしいのにあまり演奏されない作曲家ですが、再評価され少しずつ演奏機会が増えてきました。きっといつかブレイクする時が来ると思います。是非聴いてみてください。
どうぞお楽しみに!(H.O.)