第236回演奏会のご案内
矢崎彦太郎=新交響楽団5回の共演
パリを拠点に活躍し、ますます理知的な音楽作りに磨きがかかる矢崎彦太郎を指揮に迎え、フランス印象派の大作曲家ドビュッシーの作品と、パリと関わりの深いストラヴィンスキーの作品を演奏します。
今回取り上げるのは、ドビュッシーの最初の傑作といえる「牧神の午後への前奏曲」と、最後の管弦楽作品となった「遊戯」、そしてストラヴィンスキーの出世作「火の鳥」です。この3曲はいずれも20世紀初頭のパリで、バレエ・リュス(ロシアバレエ団)によりバレエ作品として初演されています。
ストラヴィンスキーとモダンバレエ
バレエ・リュスは、ロシア人のディアギレフによって1909年に結成され、パリを中心に欧州各地で公演を行いました。ディアギレフは元々「芸術世界」という雑誌を刊行し、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場管理部官員をしていました。自身は作曲も振付もしませんでしたが、プロデューサーとしてモダンバレエを開花させ、作曲家に委嘱して多くの名曲が生まれました。
「火の鳥」とは輝く黄金の羽根を持ち魔力で主人公を助ける架空の鳥です。ロシア民話を題材とした作品を1910年の新作として当初別の作曲家に依頼するも間に合わず、若手作曲家だったストラヴィンスキーに依頼して半年で仕上がりました。
初演時は本物の馬が2頭登場し火の鳥役のダンサーがワイヤーで宙吊りになるなど大仕掛けで、公演は大成功しました。コンサートで多く演奏される組曲版は2管編成で20分程ですが、今回演奏する全曲版は初演時と同じもので、4管編成にハープ3台、バンダが付いている大編成で50分の大作です。
その後ディアギレフから「ペトルーシュカ」「春の祭典」が委嘱され、ストラヴィンスキーは大作曲家への道を進みます。
ドビュッシーのバレエ音楽
「牧神の午後」は1912年に新作バレエとして上演されましたが、管弦楽曲としてはマラルメの同名の詩のために着手され1894年に完成しました。ブーレーズが「現代音楽はこの曲とともに目覚めたと言ってよい」と評するように、10分ほどの小曲ですが内容の凝縮した作品です。「牧神」は山野と牧畜をつかさどる半獣神で、葦笛を奏でニンフ(妖精)と戯れます。牧神を象徴するフルートの調べが全体を包みます。
「遊戯」というと何のことかわかりにくいですが、原題のJeuxを英語にするとPlay。テニスに興じながら恋の駆け引きをする3人の男女をテーマにしています。ドビュッシーは最初この依頼に乗り気でなかったのですが、台本・振付を担当した第一舞踊手であるニジンスキーの強い要望により倍の報酬で引受け、1913年に新作として上演されました。
テニスラケットをかかえパントマイムのような動作の踊りは評判が芳しくなかったのですが、音楽自体は観衆に好評でした。2週間後に初演された「春の祭典」の騒動の陰に隠れてしまいましたが、自由で流動的な作風は再評価されています。
どうぞお楽しみに!(H.O.)