第239回演奏会のご案内
イギリスの名曲と邦人作品
指揮者の湯浅卓雄氏は、イギリスを中心に国際的に活躍しており、CDレーベルのナクソスとは専属契約を結び、中でも「日本作曲家選輯」で多くの録音を残しています。今回の演奏会では、イギリスの作曲家ホルストの代表作である組曲「惑星」と、日本人作曲家の作品を2曲演奏します。
惑星=宇宙のシンフォニー
「惑星」が作曲されたのは1914~16年。バスオーボエやテナーテューバなどの特殊楽器を含む大編成管弦楽にオルガンと女声合唱が加わり、色彩的で迫力のある作品となっています。ホルストは占星術から構想しており、地球を除いた太陽系のそれぞれの惑星にキャラクターが記された曲が割り当てられています。メロディはとても親しみやすく、特に木星の主題の一つはホルスト自身により改作されイギリスの愛国歌「我は汝に誓うわが祖国よ」となっており、日本でも平原綾香が「Jupiter」として歌い、大ヒットさせています。
左方の舞と右方の舞
早坂文雄は1914年生まれ札幌育ち、ほぼ独学でピアノを習得、同じ歳の伊福部昭と出会い、来札したロシア人作曲家チェレプニンに師事し作曲を続けました。23歳の時にワインガルトナー賞受賞がきっかけで東宝に入社し映画音楽を手がけ、特に「羅生門」「七人の侍」など多くの黒澤作品で音楽を書いています。同時に交響作品にも取り組み、今回演奏する「左方の舞と右方の舞」は1941年に書かれた早坂の代表作です。日本的・東洋的な美学を生かす作風は後の世代の作曲家に大きな影響を与えました。その一人が黛 敏郎でした。
雅楽において、左方は中国・インドを、右方は朝鮮半島を源流とする舞を指します。2つに分けるのは陰陽、つまり宇宙のすべての事物は陰と陽に分けられるという思想からきています。また、雅楽で用いられる管楽器は、笙が天、龍笛は空、篳篥は地を現わし、それぞれが重なり一つの宇宙となるのです。
曼荼羅交響曲
黛 敏郎は1929年生まれ、東京音楽学校(現東京藝術大学)を卒業してパリ音楽院に留学するも「もう学ぶことはない」と1年で帰国。電子機器を用いるなど前衛的な音楽を生み出す一方、1958年には梵鐘の音響を分析し管弦楽で再現した涅槃交響曲を作曲し、その後は日本的な作品を数多く残しました。また、数多くの映画音楽を書き、「題名のない音楽会」では司会を32年続けるなど、戦後のクラシック音楽界のスターでした。
涅槃交響曲の2年後に、同じく仏教思想を音楽にしたのが「曼荼羅交響曲」です。曼荼羅とは、密教の儀式に用いる仏の描かれた図のことで、思想の宇宙観を示すものです。
宇宙に思いを巡らすコンサート
科学が進み、宇宙が解明されつつある現代に比べ、昔の天文学は生活や政治、宗教に密着しており、人々は宇宙をより身近に感じていたのかもしれません。音楽の宇宙の中に身を置いてみませんか? どうぞお楽しみに!(H.O.)