第245回演奏会のご案内
芥川也寸志没後30年
新響の音楽監督であった芥川也寸志が亡くなって今年で30年になります。芥川也寸志は1925年に文豪芥川龍之介の息子として生まれ、東京音楽学校(現東京藝術大学)作曲科に進み作曲家として魅力的な作品を残す一方、指揮者や音楽番組の司会者などさまざまな音楽活動を通して音楽を広め、日本の戦後の文化の発展に大きく貢献しました。今回の演奏会では芥川作品の中から、後期の代表作の一つである「オーケストラのためのラプソディ」を演奏します。
芥川の初期の作品には「管絃楽のための音楽」「交響三章」といった洗練された旋律と軽快なリズムの曲があり、その後「エローラ交響曲」のような前衛的な作風を経て、1971年に作曲されたのが「オーケストラのためのラプソディ」です。ラプソディとは自由な形式で民族的・叙事的な内容を表現した曲のことです。ほら貝のようなホルンの咆哮、日本の横笛を思わせるフルート、伝統的な5音階による旋律が散りばめられ、短いパターンを何度も繰り返すオスティナートで躍動的に終わります。芥川作品の中でも特に日本的な作品かもしれません。
バルトーク 舞踏組曲
いっしょに演奏する曲には、民族的な作曲家であるバルトークとシベリウスの作品を選びました。
バルトークはハンガリーの作曲家で、「中国の不思議な役人」「管弦楽のための協奏曲」など国際的に活躍しましたが、民族音楽の研究家でもあり、ハンガリー国内の民謡収集だけでなくルーマニアやスロヴァキアなども調査し、彼の作品にも反映されました。
「舞踏組曲」はブタペスト市50周年記念音楽祭のために1923年に作曲され、ハンガリー風の旋律以外にルーマニア風、アラブ風などの旋律による5つの舞曲と終曲からなります。ハンガリーと周辺国との連帯という意味を込めて作曲したということです。
シベリウス 交響曲第2番
シベリウスはフィンランドの国民的作曲家です。シベリウスの作品の中でもっとも人気があるのが今回演奏する交響曲第2番といってもよいでしょう。当時のフィンランドはロシアの統治下にあり、貧困に苦しみロシア化政策により自律性も危ぶまれる状態の中で、愛国独立運動が盛り上がっていました。シベリウスは第2番を作曲した1901年に、助言と資金援助を得てイタリアの地中海に臨む暖かなラッパロという都市に旅行し、途中ローマにも滞在してオペラや教会音楽を見聞きしたことが、この曲に大きな影響を与えています。
ドラマチィックでカンタービレながらフィンランド語的な響きで、そして最後には勇壮なメロディが繰り返されて高揚していきます。その光はきっと当時のフィンランドの人々の愛国心に届いたことでしょう。
どうぞお楽しみに!(H.O.)