第253回演奏会のご案内
自然を愛した作曲家ドヴォルザーク
今回のコンサートでは、チェコの大作曲家ドヴォルザークの演奏会用序曲を取り上げます。元々序曲とは劇音楽のオープニングに演奏され、劇全体のあらすじや雰囲気が伝わるように作られたものですが、それが劇用でなくそれ自体で完結するものが演奏会用序曲で、多くは物語性や詩的情緒があります。
国際的に評価されるようになったドヴォルザークは、念願だった田舎の別荘をプラハ近郊のヴィソカーに持ち、自然に親しみ村の人々と交流をしました。そこで作曲されたのが序曲三部作『自然と人生と愛』です。本来3曲連続で演奏することを意図して書かれましたが、「謝肉祭」は比較的演奏されることが多いものの、まとめて演奏される機会はあまりありません。
人生にあたるのが活気あふれる人々の生活が表現された序曲「謝肉祭」、愛にあたるのが感情の紆余曲折が表現された序曲「オセロ」で、どちらにも序曲「自然の中で」のテーマが用いられています。この作品が後の一連の交響詩(新響は2019年10月に演奏)の作曲につながっていきました。
後期ロマン派最後のシンフォニスト、フランツ・シュミット
ドヴォルザークの時代、チェコはオーストリア=ハンガリー帝国の支配下にありました。その首都ウィーンでは、新ウィーン楽派と呼ばれる調性のない前衛的なスタイルが台頭する一方、シェーンベルクと同じ歳のフランツ・シュミットは、後期ロマン派のスタイルを守った作曲家でした。
シュミットは、マーラーが音楽監督をしていた時のウィーン宮廷歌劇場のチェロ奏者、ピアノの名手でもあり、ウィーン音楽アカデミーの院長まで務めました。作曲家としては4つの交響曲やオペラなどを残し、それらはブルックナーやブラームスといった偉大な先人の伝統を引き継ぎつつ、モダンで独創的な作風となっています。
ウィーンゆかりの作曲家であるシューベルト没後100年の作曲コンクールに応募するために書かれたのが交響曲第3番です。巨大編成で厚い響きの作品が多いシュミットですが、この曲はシューベルトを意識してか、編成が小さく穏やかで、オルガン的な響きのする美しい曲です。
どうぞお楽しみに!(H.O.)