第262回演奏会のご案内
今注目の指揮者 中田 延亮
中田は1975年京都に生まれ、筑波大学医学専門学群(他大学の医学部にあたる)に進みました。在学中に音楽を志し、桐朋学園を経て新日本フィルハーモニー交響楽団の首席コントラバス奏者として演奏する傍ら、指揮の研鑽を積むという異色の経歴です。2006年からバレンシア歌劇場管弦楽団に在籍、その後もスペインを拠点に指揮者として活動していました。
日本人作曲家の作品に取組んでいきたいという中田との初共演には、新響が大切な作品として度々演奏している伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」と、スペインの作曲家ファリャの代表作「三角帽子」を選びました。
日本の民族主義的作曲家 伊福部 昭
伊福部昭は北海道釧路に生まれ、小学生のときに父親が村長になった音更村(現在の十勝地方音更町)に移り住み、アイヌに接しました。タプカーラとはアイヌ語で「立って踊る」といった意味で、喜びの時も悲しい時も、その心情の赴くまま即興の詩を歌い延々と踊るアイヌの人々への共感と思い出が「シンフォニア・タプカーラ」の動機となっています。
北海道帝国大学で林学を学び、卒業後も林務官として勤務する傍ら作曲を続け、ほぼ独学で作曲家となりました。その後は管弦楽作品の他に「ゴジラ」などの映画音楽を残し、また教育者として多くの作曲家を育てました。当団創立指揮者の芥川也寸志も弟子の一人で、新響は伊福部作品を幾度となく取り上げ、その際の作曲家立ち合いのリハーサルは当時の団員の良い思い出となっています。
スペインの民族主義的作曲家 ファリャとトゥリーナ
バレエ「三角帽子」「恋は魔術師」などで知られるファリャはスペインの作曲家。アンダルシア地方のフラメンコに大いに影響を受け、マドリードで活動をした後にパリに7年間ほど滞在しデュカやラヴェルと交流を持ちました。ちょうど同じ頃にマドリードからパリに留学していたのが6歳違いのトゥリーナでした。2人は親友で、ともにスペイン民族的な音楽にフランス印象派が混在した作品を残しました。
「三角帽子」は、美人の粉屋の女房を気に入った代官が、手を出そうと言い寄るが、かわされて逃げていくというお話。ここでいう三角帽子はパーティで使うようなとんがり帽でなく、大きなツバに3つ角がある帽子で代官の権威の象徴なのです。
どうぞお楽しみに!(H.O.)