HOME | E-MAIL | ENGLISH

メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調 「スコットランド」1842年 ロンドン稿

曽武川 千里(ヴィオラ)

メンデルスゾーンの交響曲
 フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ(1809-1847)はドイツ初期ロマン派の代表格で、彼は音楽の発想が音楽以外のものと結びついていることが多い。本日演奏する交響曲第3番「スコットランド」もその代表曲の1つである。1829年に両親へ宛てた手紙の中で、スコットランドの歴史や風景から作曲のアイデアを得たと書いている。これに「音画的手法と異国情趣」の2つを加えたことで、特に高い人気を集めたものが交響曲第3番「スコットランド」と第4番「イタリア」である。


交響曲第3番「スコットランド」
 着想を得たのは、エディンバラの観光中であった。彼は思いついたメロディーをその場で書き記したと見られている。交響曲第3番は1842年1月20日に完成した。1843年には彼自身が再校を行い、数か所の訂正と変更がなされている。通常1843年版が演奏されるが、本日演奏するのは1842年ロンドン稿である。相違点を1つ挙げると、ロンドン稿第4楽章の再現部へ向けた19小節の準備部分が、1843年版では8小節に短縮されている。使用楽器もロンドン稿では弦楽器群であるが、1843年版では木管楽器群である。本日の演奏では上記のような違いをぜひ楽しんでもらいたい。


作品構成
 この曲の最大の特徴は「4つの楽章すべてを途切れなく続けること」である。彼が作品全体のまとまりを重視したためだ。


第1楽章Andante con moto-Allegro un poco agitato イ短調 3/4拍子-6/8拍子
 冒頭はヴィオラが中心で、フルート以外の木管楽器とホルンが重なったあと、2小節間のヴァイオリンのユニゾンでシンコペーションを作りながら進んでいく。冒頭のモティーフの変形が変ロ長調、ffで現れ、静まりながら主部へつながる。523小節目で冒頭のAndanteが再現され、次楽章へ切れ目なくつながっていく。


第2楽章 Vivace non troppo ヘ長調 2/4拍子
 弦の序奏を受け、フルート+オーボエ、ファゴット、ホルンの順でモティ―フが出る。主題は9小節目アウフタクトからクラリネットが受け持つ。(譜例1)



譜例1

72小節目アウフタクトからは弦による第2主題。この楽章は2つの主題が交互に現れることにより形成されている。最後はattaccaでそのまま第3楽章へつながる。


第3楽章 Adagio イ長調 2/4拍子
 ニ短調の和音で始まり、第1ヴァイオリンの旋律、第2ヴァイオリンとヴィオラのピッツィカートに加えて低弦と管で穏やかな流れが作られ、10小節目から主題が出てくる。
 対して34小節目アウフタクトから管楽器の第2主題が現れ、主旋律はホルンである。第2楽章同様attaccaで、第4楽章へつながる。


第4楽章Allegro vivacissimo-Andante maestoso assai イ短調 2/2拍子-イ長調 6/8拍子
 3小節目アウフタクトからヴァイオリンによる主題が現れ、102小節目アウフタクトからオーボエソロのホ短調の第2主題が始まる。
 418小節目で雰囲気が変わり、第1楽章同様ヴィオラが主体となる。楽章終盤へ向けその他の楽器も加わり、ffの全合奏で華やかに曲が終わる。


初演:1842年3月3日 作曲者自身の指揮によりライプツィヒ・ゲヴァントハウスにて。(初演稿)


楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、弦5部


参考文献:
星野宏美『メンデルスゾーンのスコットランド交響曲』 
音楽之友社 2003年
ハンス・クリストフ・ヴォルプス(尾山真弓訳)
『大作曲家 メンデルスゾーン』音楽之友社 1999年
池辺晋一郎『メンデルスゾーンの音符たち 池辺晋一郎の「新メンデルスゾーン考」』音楽之友社 2018年
Claudio Abbado 1985 “SYMPHONIEN NOS.3&4” London symphony orchestra UNIVERSAL MUSIC

このぺージのトップへ