シューベルト:交響曲第3番
■31年の生涯
1797年ウィーン郊外で生まれたフランツ・シューベルトは、音楽の教師であった父からの手ほどきもあり早熟な音楽の才能を発揮した。
短時間に熱中して次々に素晴らしい作品を完成させる一方、内気で引っ込み思案な性格故に、自分の作品を積極的に売り込むことをしなかったのだが、彼の才能に惚れ込んだ友人たちが彼を守り助けた。
ゲーテ、ミュラーなどたくさんの詩人や友人たちの詩にも作曲し、数多くのリートを披露した。シューベルトが敬愛したベートーヴェンは、病で死に瀕している時に彼のリートの数々を知り、その才能に驚き、なぜ彼をもっと早く知らなかったのかと嘆いた。シューベルト自身も病に冒され、ベートーヴェンの死後1年半あまりで31歳の生涯を終える。
■交響曲第3番 /1815年18歳
この曲はシューベルトの交響曲の中で最も短く、軽快に簡潔にまとめられている。モーツァルトやハイドンの影響も感じられるが、彼の得意とするリートの特徴もうかがえる。同じ年に書かれた『野ばら』や『魔王』といった名曲とともに個性が開花されていったのではないか。
滅多に書き直しをしない彼は、この作品の手稿譜にも訂正や試行錯誤の跡を残していないと言われている。後期の『未完成』や『グレート』といった重厚感ある交響曲と比べると、この第3番はリートを書く延長のようにスラスラっと仕上げたような印象を受ける。
第1楽章: Adagio maestoso - Allegro con brio ニ長調 4/4拍子 序奏付きソナタ形式
荘厳な雰囲気だが真冬の厳格さではない序奏。クラリネットの雪解けのようなメロディが始まる。オーボエがイ長調へ転調をして、共通する付点のリズムを軽やかに歌い上げる。
第2楽章: Allegretto ト長調 2/4拍子 三部形式
洗練されているが気負わない、生き生きとした旋律をヴァイオリンが歌い出し、その後をフルートが引き継ぐ。中間部のクラリネットののどかな旋律は、ずっと続いて欲しい平和な日常を歌いあげているようだ。
第3楽章: Menuetto: Trio - Vivace ニ長調 3/4拍子 三部形式
3拍子の軽やかなテンポ感の楽章。中間部トリオでは、それまでの雰囲気から一転して、オーボエとファゴットによるゆるやかな舞踏が始まる。
第4楽章: Presto vivace ニ長調 6/8拍子 ソナタ形式
タランテラの陽気な踊りのようなリズムを持つ。アウフタクトの軽快なフレーズが繰り返され、若きシューベルトの躍動感あふれる楽章となっている。
初演:1881年2月19日 オーガスト・マンス指揮 「水晶宮コンサート」(ロンドン)
楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部
参考文献:
レシーニョ・エドゥアルド、プリンチペ・クィリーノ、プレフーモ・ダニーロ『大作曲家の世界 2ウィーン古典派の楽聖』音楽之友社 1990年
ひのまどか『音楽家の伝記 シューベルト』ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス 2020年