第171回演奏会のご案内


●アンサンブルの原点に

第171回演奏会では.元東京クワルテットのヴァイオリニストであり、まだ指揮者としても広範に活躍する原田幸一郎を迎えてロマン派の名品を3曲取り上げます。新響とのこれまで9回におよぶ共演では、豊富な室内楽の経験を生かし、古典派、ロマン派の名曲を取り上げることで緊密な関係を築いてきました。
今年の新響の演奏会ではショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキー等の大規模な曲が続きましたが、今回は言うなれば「交響曲の古里」に回帰し、アンサンブルの原点に戻る音楽会にしたいと考えております。
新響の従来のプログラムは、とりわけ編成が大きく、金管や打楽器奏者が総出演、また時によっては客席に別働隊(バンダ)が立ち並ぶといった、いわば「力技」で取り組む管弦楽曲が主流を占めていました。そしてそれらの大曲に熱演で立ち向かうことで、奏者側と客席側の一体感が生まれたときに演奏会は成功に結びついてきたといえます。
そのような中で、私たちメンバーは長い間、なかなか越えられない壁のようなものを感じていました。それは、古典的なスタイルの曲をいかに味わい深く演奏するかということです。そのような苦手意識もあってか、メンデルスゾーンの交響曲は実に20年以上も新響のプログラムに載ることがあサませんでした。
今回は良く知られた名曲を揃えたプログラムで、新響の目指す「新しい響き」を求めるについて、楽曲の解釈またオーケストラのトレーニングに最も適任ともいえる原田幸一郎のもとでリリシズムあふれる旋律の数々をお聴きいただきたいと思っております。

●2つの交響曲

今回の演奏会ではメンデルスゾーンとドヴォルザークの2つの交響曲が演奏されます。「イタリア」はその名の通り作曲者が1831年にイタリアに旅行し、ローマの印象に基づいて作曲されたもので、彼は家族に宛てた手紙などで「かつて書いたなかで最も陽気な曲」と書き綴っていますが、躍動的で陽気な曲想の合間に聴かれる叙情味あふれる流れるような美しい旋律が何よりの魅力となっています。
ドヴォルザークの交響曲第7番は、前の「イタリア」が初演された後50年あまり経った1885年に初演されました。ドヴォルザークは前年ベルリンで聴いたブラームスの「第3交響曲」に強く啓発されて作曲の筆をとりましたが、そのためかこの交響曲はドヴォルザークの作品にいつも色濃く現われるボヘミアの郷土性、民族性があまり感じられず、どちらかといえばブラームス的な渋さが全曲を支配しています。ただ、その中にあっても中間の2つの楽章では、多くの作曲家が羨ましく感じた「メロディーメーカー」としてのドヴォルザークの面目が見事に発揮されています。
さて、この2つの交響曲には思わぬ共通点があります。それは両者ともに英国のロンドン・フィルハーモニック協会の依頼により書かれ、作曲者の指揮によりロンドンで初演されて大成功をおさめていることです。
今同の演奏会では、この50年の年月を隔てて、当時の世界楽壇の桧舞台で初演された2つの交響曲をお楽しみいだだきたいと思います。(文中敬称略)

第171回演奏会(2000年10月7日)ちらしより


最近の演奏会に戻る

ホームに戻る