第178回演奏会のご案内


●譜面に書いてあるから、ではなく−−飯守泰次郎の音楽

 新響はオーケストラとしての基本的な力の向上を目指し、ここ3回の演奏会でブラームス、メンデルスゾーン、マーラー、と連続してドイツ・オーストリア系の作曲家の、いわゆる名曲といわれる交響曲に取り組んできました。この流れの中で、今回の演奏会をひとつの節目ととらえ、1993年以来新響を継続的に指揮していただいている飯守泰次郎氏とともにブルックナーの第8番の交響曲を取り上げます。
 飯守氏の新響に対する要求はいつも厳しく、現在の実力の範囲内での最高の演奏、では許されません。常にもう一段次元の高いものが要求されます。一人一人の団員には単にパート譜に並んだ音符だけでなく、音楽の全体像を把握することが求められます。
 「譜面に書いてあるからクレッシェンドしました、アクセントをつけました……そう聞こえるような無機的な音の出し方をするな」
 練習時に繰り返される飯守氏の要求はつまり、そこで作曲家はどのような表情の音楽を求めているのか、ということを考えて、あるいは感じて演奏せよ、ということなのです。「調性や和音の進行をきちんと把握して弾け」という指示もたびたびですが、和音の前後関係と各奏者の位置づけを知り、次に何の和音が来るかがわかって弾く時とそうでない時とでは、出てくる音の響きは大きく違います。
 加えて今回はブルックナーとワーグナーです。ドイツ各地の歌劇場やバイロイト音楽祭など、ドイツ音楽界での長いキャリアに裏打ちされた氏の言葉は「目からウロコ」の連続ですし、全身からあふれ出る音楽はわれわれに全く新しい世界を見せてくれます。それを客席の皆様と共有できればこれにまさる喜びはありません。ぜひご来場ください。(T.S)

第178回演奏会(2002年7月13日)ちらしより


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