第191回演奏会のご案内
渡邉−シベリウス再び
新交響楽団は渡邉康雄氏との1998年の初共演(第160回演奏会)以来、氏のライフワークであるシベリウスの作品を必ずプログラムに盛り込んできました。氏の祖母はシベリウス・アカデミーで学んだフィンランド人であり、そして名指揮者の父・渡邉暁雄氏は終生シベリウスの作品に取り組みました。いわば「直伝」のフィンランドの魂を響かせてくれることでしょう。
アナスタシア、新響に登場
ヴァイオリンのアナスタシア・チェボタリョーワ氏は、1994年チャイコフスキー国際コンクール・ヴァイオリン部門で最高位を獲得、世界的に活躍しています。以前に新響と競演したウラジミール・オフチニコフ氏と同様、くらしき作陽大学「モスクワ音楽院特別演奏コース」ヴァイオリン特任教授として後進の指導にも取り組んでおり、日本にはとても馴染みの深い現代ロシアを代表するヴァイオリニストです。今回、同じくらしき作陽大学にて教鞭をとる渡邉康雄氏との競演が実現しました。
シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、新響にとって1990年(原田幸一郎指揮、ヴァイオリン漆原朝子)以来2度目の演奏ですが、渡邉康雄氏との競演を重ねることによって「シベリウスの語法」を獲得してきた新響が繰り広げるシベリウスの世界をご堪能ください。
今、改めて「新世界より」
誰もが耳にしたことのある2楽章の「家路」のメロディ等で知られる「新世界より」は、クラシック史上屈指の名曲です。親しみやすさと演奏のしやすさで、アマチュアオーケストラのレパートリー としては頻繁に取り上げられていますが、新響でも1961年以来5度目の演奏となります。前回は1990年の山田一雄の指揮でした。ともすれば「通俗名曲」と評価されがちな面もありますが、本質的には非常に深く多面的な内容を持っている曲です。この「本当の名曲」に新鮮な気持ちで新たに取り組むことにより、「新たな響き」をお届けいたします。
渡邉康雄(指揮)
指揮者・渡邉曉雄の長男として1949年東京に生まれる。東京芸術大学付属高校の作曲科を卒業後に渡米、18歳より8年間ボストンのニューイングランド音楽院とニューヨークのジュリアード音楽院にて学ぶ。ピアノをセオドア・レトヴィンとサッシャ・ゴルトニツキーに師事。
ボストン留学中の1972年に東京文化会館にてブラームスのピアノ協奏曲第2番を父子共演してピアニストとしての華々しいデビューを大成功させ、以後、NHK交響楽団、東京都交響楽団、ヘルシンキ放送交響楽団などと共演し、日本はもとより世界各国にて幅広い演奏活動を行っている。
指揮の分野では1982年の徳島交響楽団をはじめ、愛媛響、山形フィル、神戸室内合奏団と続き、1992年にサントリーホールで日本フィルハーモニー交響楽団を指揮してプロの指揮者として正式なデビュー公演を飾った。以後オーケストラアンサンブル金沢、東京都交響楽団、群馬交響楽団など日本の代表的オーケストラを数多く客演指揮している。現在くらしき作陽大学教授、桐朋学園大学非常勤講師、上齋原ピアニストキャンプ・ディレクター、津山国際総合音楽祭副監督。
アナスタシア・チェボタリョーワ(ヴァイオリン)
オデッサ生まれ。8才で高名なヴァイオリン教授イリーナ・ボチコーワに才能を見出され、モスクワ中央音楽学校を経て1996年モスクワ音楽院卒業、1998年同音楽院大学院修了まで、同女史のもと一貫したロシアン・メソッドに学ぶ。1989年パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール入賞、1994年チャイコフスキー国際コンクール・ヴァイオリン部門最高位。ロシアはもとより世界各地に招かれ、フェドセーエフ指揮チャイコフスキー交響楽団(旧モスクワ放送管)、テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団等と共演。1999年よりモスクワ音楽院のアシスタント・プロフェッサー。
2000年よりくらしき作陽大学モスクワ音楽院特別演奏コースに特任教授。日本国内ではリサイタルのほか、N響、都響、大阪フィル、日本フィルなど各オーケストラと共演。またフジテレビやNHKなどのドラマ・メインテーマ曲の演奏、また番組出演など幅広く活躍中。
ロシア国家コレクションから特別に貸与されたストラディバリ“Zubowsky”(1729)を愛用しており、自身「陽の光が差し込むような音色で、理想的な楽器」と語っている。
新交響楽団のプロフィル
新交響楽団は1956年に創立されたアマチュアオーケストラです。音楽監督・故芥川也寸志の指導のもとに旧ソ連演奏旅行、ストラヴィンスキー・バレエ三部作一挙上演、10年におよぶ日本の交響作品展(1976年にサントリー音楽賞を受賞)、ショスタコーヴィチ交響曲第4番日本初演など意欲的な活動を行ってきました。またマーラーの交響曲全曲シリーズ(故山田一雄指揮、1979〜90)、ベルリン芸術週間への招聘・邦人作品演奏(故石井眞木指揮、1993)、ワーグナー「ワルキューレ」演奏会形式公演(飯守泰次郎指揮、1996)、伊福部昭米寿記念演奏会(2002)、バルトーク「中国の不思議な役人」復刻版全曲演奏(2003)、石井眞木遺作「幻影と死」完全版初演(いずれも高関健指揮、2004)など、幅広い活動を積極的に展開しています。近年はロシア極東交響楽団芸術監督ティーツ、オフチニコフ(ピアノ)との共演など、海外の芸術家との交流にも取り組んでいます。
第191回演奏会(2005年10月16日)ちらしより