第195回演奏会のご案内
新交響楽団創立50周年シリーズ
創立50周年シリーズもいよいよ最終回。ついに飯守ワーグナーの登場です。しかも最高傑作と言われる「トリスタンとイゾルデ」です。
1996年の創立40周年シリーズで「ワルキューレ」第一幕および1998年の「ニーベルングの指輪」ハイライト以来、新響にとっては久しぶりの本格的なワーグナー・プログラムとなります。バイロイト音楽祭およびドイツを中心としたオペラハウスでの豊富な指揮経験を持つ飯守氏と、現在の日本で望み得る最高のソリストを迎えます。半世紀に及ぶ新響の歴史の節目にふさわしい、すばらしい演奏になることでしょう。
ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」
オペラのほとんどは男女の恋愛物語ですが、この「トリスタンとイゾルデ」はその究極のものといえましょう。中世の説話を題材としてワーグナーが自由に構成したストーリーとなっており、舞台上で進行する物語は極限まで簡素化され、音楽は登場人物の内面の表現に徹します。それだけに最初はとっつきにくいといった印象をもたれることもあるようです。なにしろ他のワーグナー作品のように、鎧をつけた乙女が空を飛ぶ馬に乗ってやってきたり、白鳥に引かれて謎の騎士が現れたりといったスペクタクルな場面がありませんから。ですから、今回はじめてこの曲をお聴きになる方は、有名な「前奏曲」と「イゾルデの愛の死」だけでも事前に聴いておくとすんなりとこの音楽の世界に入り込めるのではないでしょうか。
その魅力の一部を紹介すると、(1)「前奏曲」や第一幕の終盤で両主人公が毒薬のつもりで媚薬を飲んでしまった後の、男女がお互いを求めるかのような官能的な音楽、(2)第二幕の「トリスタンとイゾルデの愛の場面」で奏でられる、いつ果てるとも知れぬ、あるときは激しく煽情的な、またあるときはけだるく陶酔するような音楽、そして(3)終幕の「イゾルデの愛の死」でもたらされる究極の恍惚感、などです。一度その魅力を知ると抜け出すことが容易ではない、すさまじい魔力を持った音楽が展開されます。
この曲は全てが聴き所と言ってよいのですが、今回はその中から、特に聞き所の箇所を選び、全曲の半分に抜粋して演奏会形式でお送りします。前述の通り、この曲は登場人物の内面を表現していますので舞台装置や演技がなくてもその魅力のかなりの部分は表現することが可能だと思います。それだけにオーケストラの役割は重要であり、飯守氏の指導のもと、新響も満を持して臨みます。どこまで「トリスタンとイゾルデ」の魔力を引き出すことができるか。是非ご期待ください。
新交響楽団創立50周年シリーズ
1)第192回演奏会 2006年1月22日(日)東京芸術劇場14:00
指揮:小松一彦
曲目:三善晃/交響三章
ショスタコーヴィチ/交響曲第8番
2)第193回演奏会 2006年4月16日(日)東京芸術劇場14:00
指揮:高関健
曲目:猿谷紀郎:Swells of Athena/搖光の嵩まり
ショスタコーヴィチ(バルシャイ編)/室内交響曲作品110a
R.シュトラウス/アルプス交響曲
3)第194回演奏会 2006年7月22日(土)サントリーホール19:00<芸術文化振興基金助成事業>
指揮:岩城宏之 合唱:栗友会
曲目 芥川也寸志/交響管絃楽のための音楽
伊福部昭/管絃楽のための日本組曲
黛敏郎/涅槃交響曲
4)第195回演奏会 2006年11月12日(日)東京芸術劇場14:00
指揮:飯守泰次郎
独唱:緑川まり(sop)成田勝美(ten)ほか
曲目:ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」抜粋(演奏会形式)
新交響楽団のプロフィル
新交響楽団は1956年に創立されたアマチュアオーケストラです。音楽監督・故芥川也寸志の指導のもとに旧ソ連演奏旅行、ストラヴィンスキー・バレエ三部作一挙上演、10年におよぶ日本の交響作品展(1976年にサントリー音楽賞を受賞)、ショスタコーヴィチ交響曲第4番日本初演など意欲的な活動を行ってきました。またマーラーの交響曲全曲シリーズ(故山田一雄指揮、1979〜90)、ベルリン芸術週間への招聘・邦人作品演奏(故石井眞木指揮、1993)、ワーグナー「ワルキューレ」演奏会形式公演(飯守泰次郎指揮、1996)、伊福部昭米寿記念演奏会(2002)、バルトーク「中国の不思議な役人」復刻版全曲演奏(2003)、石井眞木遺作「幻影と死」完全版初演(いずれも高関健指揮、2004)など、幅広い活動を積極的に展開しています。近年はロシア極東交響楽団芸術監督ヴィクトル・ティーツ、オフチニコフ(ピアノ)との共演など、海外の芸術家との交流にも取り組んでいます。
第195回演奏会(2006年11月12日)ちらしより