第151回演奏会(1996年1月)維持会ニュースより
「ワルキューレ」は、ニーベルングの指輪と題される、普通のオペラでいうと4本で一つの楽劇(つまり、連日上演しても4晩かかるというとてつもない長さ)の一部です。
1.『ニーベルングの指輪』全体の構成
前夜祭「ラインの黄金」全1幕4場構成‥‥約2時間(幕間含まず、以下同じ)
第1夜「ワルキューレ」全3幕‥‥約4時間弱
第2夜「ジークフリート」全3幕‥‥約4時間
第3夜「神々の黄昏」全4幕(序幕+1〜3幕)‥‥約4時間半強
ラインの黄金が前夜祭と名付けられているため、ワルキューレは第1夜と呼ばれますが、実際は2番目の物語ということになります。
2.『ニーベルングの指輪』登場人物
全部で34人の歌手、および合唱団が登場します。
4夜続けて登場する人物がいないのが特徴(歌手にとっては幸い?)かもしれません。
誰が主人公か、解釈によりますが、一般的にジークフリート(神々の長ヴォータンの血を引く人間の英雄)とブリュンヒルデ(ヴォータンの愛娘、ワルキューレの一人)、それにヴォータン(神々族の長)、アルベリヒ(地下に住む小人達であるニーベルング族の支配者、ラインの黄金を奪い世界征服の魔力を秘めた指輪を作った張本人)あたりが主要な人物でしょうか。
3.「ワルキューレ」とは
「ワルキューレ」とは、神々の長ヴォータンが、神々族の世界支配を維持するために、知恵と予言の女神エルダとの間のもうけた9人の娘のことで、いわば神々族の空軍にあたります。彼女達はみな勇敢な女騎士であり、天馬に乗って空を駆けます。
ヴォータンの計画では、ワルキューレ達に、洗浄に倒れた人間の勇士達の亡きがらを天上に運ばせ新たな命を与えて、神々族の新しい城ワルハラ城を守る手助けをさせるはずでした(しかし第3夜の楽劇の題名が「神々の黄昏」であることからわかるとおり、この計画は挫折し、ワルハラ城は炎上して、この4夜にわたる楽劇は幕を閉じるのです)。
4.『ニーベルングの指輪』
第一夜「ワルキューレ」あらすじ
―第一幕―(今回演奏する部分です)
生き別れていた双子の兄妹(ヴォータンと人間の間の子)ジークムントとジークリンデが出会い、兄妹と知りつつ恋に落ち、駈け落ちする(この時、ジーグリンデは英雄ジークフリートをみごもる。)
―第2幕―
妻ジークリンデに逃げられたフンディングの告発により、ヴォータンは神としての立場から意に反してジークムントを見殺しにせざるをえなくなる。彼の愛娘でワルキューレの一人であるブリュンヒルデは、父の本心を見抜いてこの兄妹を守ろうとするが、結局ジークムントはフンディングに倒されてしまう。
―第3幕―
ブリュンヒルデは、ジークリンデに英雄ジークフリートをみごもっていることを教えて逃がしてやるが、この勝手な一連の判断がヴォータンの怒りにふれる。ブリュンフルデは罰として神性を奪われ炎に囲まれた山頂に眠らされる。
5.今回の演奏会で使用する珍しい楽器
維持会の皆様のご支援で購入が実現し、今回の演奏会でデビューするぴかぴかの4本の「ワーグナーテューバ」にまずご注目下さい。ホルンの右にいる、ホルンを縦に引っ張ってのばしたような形の楽器です。その名の通りワーグナーが考案した楽器で、ワーグナーの作品の他ブルックナーの交響曲でも使用されます。これはホルン奏者が担当します。
トランペットの左端には、少し大きなトランペットがいます。これは「バストランペット」という楽器で、トロンボーン奏者が担当します。
トロンボーンの中にも珍しい楽器がいます。普通の3管編成ではテナートロンボーン2本とバストロンボーン1本ですが、今回はさらに低い音域を担当する「コントラバストロンボーン」が登場します。見たところひとまわり大きいだけに見えますが、演奏する側にとってはこの差は小さくないようです。これはバストロンボーン奏者が担当します。
このほか、おなじみのハープですが、実はワーグナーは6台ものハープを指定しています。飯守先生も多ければ多いほど望ましいとおっしゃいますが、種々の制約により、今回は2人のハープで演奏します。
なお、記述に若干の間違いがあるかもしれませんがどうかご容赦下さい。
(チェロ奏者 吉川具美)