第157回演奏会(1997年4月)維持会ニュースより


維持会ニュース編集後記
「聴いてください 飯守&新響」

新響ホルン奏者 大原久子

 初めて飯守先生をお迎えしたのは、ちょうど4年前の春の演奏会で、今度の演奏会で4度目の共演になる。

  ああこの人は本当に音楽が好きなんだな。

 この指揮者と接するたびに感じる。
 前回はタンホイザー序曲とワルキューレ第一幕全曲というオール・ワーグナー・プロだった。
 飯守先生から申し出てくださり、2、3回だったと思うが、お昼すぎから夕方までの練習の予定を夜まで延長していただいた。夕方まで新響の練習をしたあと、元々予定していたお仕事に行かれ、また7時すぎに戻って新響の練習を見るといったハードスケジュールをこなしていただいた日もあった。
 曲が難しくて新響の仕上がりが遅かったためだが、いろいろな意味ですごくうれしかった。
 これがプロのオケだったら、リハーサルが延びるなんていったら団員に嫌がられるかもしれない。無償で残業をさせられているようなものだし、その後の仕事の予定が入っているかもしれないからしかたがない。
 けれどアマチュアオケの楽しみは演奏会本番はもちろんだが、毎週の練習が楽しくて(その後の一杯が楽しみという人も大勢いるが)やっているのだ。楽しい(もちろん緊張感も大きいが)飯守先生の練習が増えることはそれだけでうれしいし、本番を前にしてワーグナーにどっぷり漬かれる喜び。そして何よりも飯守先生が新響にこんなにまでしてくれるんだというありがたさでいっぱいであった。
 こんなこともあった。曲を冒頭から通していて数十分後、4番ホルンの伸ばしの音がちゃんと出なかったといって棒が止まった。ソロでも何でもない全体のハーモニーの中の一つの音である。その時は「そんなこと(と言ってはいけないのだが)で止められて、指摘された本人は気の毒だ」と正直思った。そうじゃない、すべての音が重要なのだ。飯守先生は音楽に対して決して妥協しない、そしてオケに緊張感を与えてくれる。
 普通アマチュアオケ相手であれば、多少おだてて気分良くさせて、無理せず安全運転の指揮をして、ちょっと早めに練習を切り上げて...なんていう指揮者が多いかもしれない。けれど飯守先生は違う。音楽にプロもアマもないということを実感させてくれる。
 今回はその飯守先生が得意とするブルックナーをとりあげる。新響が飯守先生とブルックナーを演奏するのは4番、8番に続き3度目となる。また、武満は飯守先生の方からやりましょうを提案していただいた曲、かなり意欲的に取り組んでいただけると信じている。
 新響は昨年40周年を迎え、そして今年新たな第一歩をふみだした。これからの活動を考える上で飯守先生は私たち新響にとってなくてはならない指揮者であり、常任指揮者的な存在として3回に1度位の割合で演奏会を振っていただきたいと希望している。音楽を愛する飯守先生と飯守先生を大好きな新響とのカップルをどうか見守ってください。そして、ぜひ演奏を聴いてください。


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