パロディ的な四楽章によせる4つの断片

<1>

けたたましいトランペットが道化芝居の開幕をしらせる。場面は語りはじめる。

マニュエル・ド・ファリャ様。あなたを生み、あなたが数々の創作の中で夢みられた美しいあなたの土地は、いまや砲火と殺戮の巷と化したようです。後再び、あなたが廃墟に立って、かつてあなたが描いた庭や丘を見わしたなら、あなたは涙なしにはいられないでしょう。これはくずれおちた煉瓦の山の上に足を踏みおろしながら、荒れ果てた四方を見て涙をおとしているあなたの肖像画です。

<2>

イーゴル・ストラヴィンスキー様。私たちは随分あなたの軽業をみてきました。随分突飛なこともあなたはなさいましたね。けれども軽業では、人の心を泣かすことも騒がすこともできないでしょう。このあいだ街をとおるチンドン屋を見て、ふとあなたのことを思い出しました。どうぞお怒りにならないで下さい。これはシルクハットに燕尾服のいでたちでチンチンドンドンをやって行くあなたの肖像画です。

<3>

モーリス・ラヴェル様。あなたはとうとう結婚なさいませんでしたね。婚礼の日に待てど暮らせどその亭主がやってこないみたいだって、罪のない孔雀をルナール様と一緒にお笑いになったあなたでしたが。しかし、私はあなた自身にこの孔雀を感じてならないのです。これはもう羽もぼろぼろになった一匹の孔雀の絵です。失礼なことですが、顔はあなたに似せて書いておきました。(弱音器をつけたトランペットでこの孔雀が4回鳴きます。もうお婆さんなので昔のような声は出ません。)

<4>

アルベール・ルーセル様。あなたを尊敬しておりますので、どうもこの肖像画は書きにくうございました。ご老体なのにエネルギーにあふれた作品をお書きになるのにはほとほと感心しております。これはあなたが1人でビフテキを4人前お平げになる図です。トランペットとトロンボーンが開幕の合図をするので、あなたは舞台の上であわてて最後の大きい奴をほおばりこむのですが、これは不幸なことに喉につかえてしまうのです。もちろん苦しいのであなたはドタバタなされますが、この音はティンパニに書いておきました。

「フィルハーモニー」誌1937年12月号より


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