第194回演奏会パンフレット(2006年7月)掲載予定


追悼 岩城宏之先生

団長 土田恭四郎

 6月13日未明に岩城宏之先生が逝去された、との第一報が新響に入ったのは当日の早朝でした。マスメディアを通じて訃報が駆け巡り、深い悲しみに包まれたことは周知の通りです。
 既に練習が始まっている途中で指揮者が突然あの世に旅立たれる、ということは新響にとりまして初めてのことです。5月からの練習が2回キャンセルとなり、岩城先生と練習であいまみえることが一度もできなかったことが、甚だ残念でなりません。
 新響が岩城先生と初めてお会いしたのは2004年11月12日(金)18時ホテルオークラ本館のロビー、これが第194回演奏会の始まりでした。少なくとも2000曲以上は初演した、という先生の豊富なご経験によるお話から、新響とならば、芥川先生の傑作にて戦後の日本の音楽界に影響を与え続けてきた「交響管絃楽のための音楽」、1933年に北海道で19歳の学生だった伊福部先生が独学にて作曲したという事実に敬意を表したいとのことで「日本組曲」、そして新響創立の頃「3人の会」と深く係わった岩城先生がライフワークと位置付ける「涅槃交響曲」をじっくりと取り組みたい、ということで大いに盛り上がり、すごくやる気になった!と喜んでおられたのが、昨日のように思い出されます。
 岩城先生とお会いする度に、ユーモア溢れる楽しいエピソードから音楽に対する旺盛な知識、そして自らの意思と使命感に培われた真摯な勇気が生命力として満ちておられる先生の迫力に圧倒され、まさか突然のお別れとなろうとは思ってもみませんでした。誠に無念です。
 岩城先生と一緒に創り上げた本日の演奏会を開催することが先生のご意思と言えます。現在の新響を理解してくださるお一人として、ご多忙のところ快く指揮を引き受けていただきました小松一彦先生には深く感謝申し上げます。
 岩城先生と初めてお会いした時、「アマオケとやる時には、慰謝料をもらいたいね。」と、あのとびきりの人なつこい笑顔でさらりとおっしゃいました。新響は、心を込めて本日の演奏を慰謝料としてお支払いします。
 謹んで岩城先生のご冥福をお祈りし、本日の演奏会を岩城先生の御霊に捧げます。


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