新交響楽団指揮者紹介


井崎 正浩
IZAKI Masahiro

 '95年5月のブダペスト国際指揮者コンクールに優勝以来、一躍注目を集め始めた指揮者。これまでにハンガリー国立交響楽団、ブダペスト交響楽団、MAV(マーヴ)交響楽団、ハンガリー国立歌劇場管弦楽団等を指揮し、高い評価を受けている。またコンクール中の演奏をハンガリー国立オペレッタ劇場総裁に認められ、同年11月同劇場に招かれレハール作曲「メリー・ウィドゥ」を指揮してデビュー。

 '96年1月の同劇場初の日本公演にも指揮者の一人として同行し成功に導き、その手腕を絶賛された。これまでのハンガリー国内での演奏の全てが国営テレビ・ラジオで中継あるいは放送されており、現在ではハンガリーで最も有名な日本人のひとりとなっている。“ヨーロッパの精神を持った指揮者”(マジャール・ヒールラップ紙)、“日本人離れをした才能と感覚”(読売新聞)等の評価が高まる一方、ミューヴェス・ハーズ社(ハンガリー)と契約しCD第一弾としてオペレッタ「サーカス・プリンセス」(カールマン作曲)がこの夏リリースされた。日本では '96年1月に東京シティーフィルのニューイヤーコンサートを指揮してデビューを飾って以来、これまでに読売日響、日本フィル等を指揮している。

 指揮法を安永武一郎、カール・エスターライヒャー、ギュンター・トイリング、湯浅勇治、遠藤雅古、伊藤栄一の各氏に師事。福岡教育大学音楽科卒業、東京学芸大学大学院(作曲・指揮法講座)修了、オーストリア国立ウィーン音楽大学(オーケストラ指揮科・合唱指揮科・作曲科)に文部省派遣給費留学。

(リコーフィルハーモニーオーケストラ第11回定期演奏会プログラムより転載)


新しい星、井崎正浩先生に期待する>

 とにかくダイナミックで、かっこいい指揮者の登場である。と書くと、ただうわべだけの棒振りと受け取られてしまいそうだが、音楽は声楽に基礎を置くオーストリア仕込みの正統派そのもの。その上で、独自の新鮮な音楽を追及していく姿勢は演奏する側にとって、また聴く側にとっても大変共感を覚えるものである。

 国際コンクール二回目の挑戦で、見事ブダペストでの優勝を果たした井崎先生だが、これまでとくに音楽のエリートコースを歩んできたわけではない。いわゆる音大の卒業でもなく、地元福岡の大学からウイーンに留学したのもはじめは声楽をめざしたものだったが、そこで指揮の方に道を変更し、帰国後は学芸大の大学院に学びながらアマチュアの合唱団やオーケストラの指導をしながら研鑽を積んできた。もちろん音楽家にとって学歴は何ら問題となるものではない。今や世界最長老の指揮者朝比奈隆先生も音大出ではないし、本日のプログラム最初の曲の作曲家武満徹先生も音楽は全くの独学という。才能と地道な努力の積み上げ、それに人柄がわれわれを魅了する音楽を作り出す。

 井崎先生とは、別のアマオケ(リコーフィルハーモニーオーケストラ)で常任指揮者として指導していただいていて、10年ほど前からのお付き合いになるが、その音楽、指導力、人柄にはますます惹き付けられてきている。

 人柄は会っていただければすぐ分かるが、礼儀正しい、謙虚ではあるが自信に満ちた頼もしい人物である。かと言って決して堅苦しいのではなく、練習後や合宿の飲み会でのエンタティナーぶりは見事なものである。

 井崎先生はその優れた音楽性に加えて大変な勉強家である。たいていの曲は完全に暗譜で振れるようになるまで頭にたたき込む。また指揮は大変分かりやすい。こちらが見やすいように、分かりやすいように振ってくれる。どんな振り方もできてしまう器用さがあり、われわれアマチュアにとってはありがたいのだが、器用貧乏を心配してしまう程である。かつてのヤマカズ(山田一雄)先生は棒は分かりにくかったが音楽にはわれわれは本当に魅せられた。井崎先生にもなおいっそうハートのある音楽、チャレンジのある音楽を期待したい。

 コンクール優勝後、音楽と人間の幅に一段と広がりが出てきた井崎先生にはこれから指揮界の若手の星として大いに活躍し、さらにはそれにとどまることなく世界的指揮者への道を期待したい。先生はそれに必ず応えてくれるものと確信している。

                      (Vla 岡本 明)


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