2001年3月維持会ニュースより
朗報!
飯守泰次郎氏が「サントリー音楽賞」を受賞
1993年より新響との共演を重ね、一昨年の「芥川也寸志没後10年」および今回の「山田一雄没後10年」という新響にとって特別な意味を持つ演奏会の指揮台に立ってくださる飯守泰次郎氏が、このたび今年度のサントリー音楽賞を受賞されました。サントリー音楽賞とは、毎年、その前年のわが国の洋楽の発展にもっとも顕著な功績のあった個人または団体に贈呈される賞です(これまでの受賞者は指揮では秋山和慶氏、外山雄三氏、岩城宏之氏、若杉弘氏、尾高忠明氏、特別賞としてサヴァリッシュ氏)。
奇しくも、1976年に新響創立20周年の際の「日本の交響作品展」が評価されて芥川先生とともに受賞したのも、この同じサントリー音楽賞です。
<贈賞理由>
近年、飯守泰次郎氏は指揮者としての活動の場を日本に移してきたが、2000年は東京シティ・フィルの常任指揮者として、ベーレンライター校訂新版による国内初の「ベートーヴェン・チクルス」(3月16日、5月18日、7月27日、11月2日、および12月26日)に取り組み、古典的作品の演奏を通じて、この若いオーケストラの実力を飛躍的に高めた。そして同楽団創立25周年記念公演(9月2日)では、ワーグナー「ラインの黄金」をセミ・ステージ形式で上演し、長年バイロイト音楽祭で音楽助手を務めた経験を活かして公演を成功に導き、オーケストラが主導する舞台上演というワーグナー上演の新しい可能性を切り拓いたことは称賛に値する。
また新国立劇場におけるバルトーク「青ひげ公の城」(11月24、26、28、29日)の指揮もさることながら、2000年度の飯守氏の業績で特筆に価するのは、なんといっても関西二期会公演、ワーグナー「パルジファル」(10月7、8日)における指揮であろう。この公演は日本におけるワーグナー上演史に金字塔を打ち立てたものであるが、飯守氏がワーグナー晩年の難解な作品に対して洞察に満ちた解釈をおこない、またそれをワーグナー経験の浅い独唱者・合唱団・オーケストラに徹底して伝えることができたのは、とりもなおさず飯守氏が非凡な文学的・音楽的能力と、すべての音楽家から信頼される包容力ある人格を兼ね備えている証しといえよう。
飯守氏は人気を追い求めることなく−教育的な意味でも−堅実に指揮活動を積み重ね、わが国の音楽文化を裾野から支える貴重な人材となっている。上記の理由から、ここに今年度のサントリー音楽賞を贈り、飯守氏の長年にわたる功績を称える事は、まことに時宜にかなったものと判断したい。
(サントリー音楽財団プレスリリースより)