2009年新潟公演のご案内
新響、再び新潟へ
1996年6月、現在の魚沼市にある小出郷文化会館のオープニングコンサートにおいて、新交響楽団(新響)は縁あって地元の合唱団とベートーヴェン交響曲第9番を共演しました。350名もの大合唱団とそれを支える地元の皆様と共に響き渡った「歓喜の歌」は、大変感動的なものでした。
あれから13年、小出郷文化会館は地域文化の拠点として全国的にも注目される存在となりました。新響もまた首都圏のアマチュアオーケストラを代表する存在として着実に成長を遂げています。今回の公演は新響にとって、新潟の皆様と音楽の喜びを共有できる素晴らしい機会です。
音楽はみんなのもの
新交響楽団は1956年に故芥川也寸志により創立されたオーケストラです。年4回の東京での定期演奏会を中心に、様々な職業・年齢の130名に及ぶ団員により自主運営されています。芥川の「音楽を愛する事にプロもアマチュアもない。音楽はみんなのもの。」という理念に支えられ、意欲的に活動をしてまいりました。演奏する作品に深い共感と探求心を持ち、時間と愛情をかけてアプローチしていくことを信条としており、その演奏は多くのお客様に支持されています。
芥川は作曲家として魅力的な作品を残す一方、指揮者や音楽番組の司会者として、また様々な活動を通して音楽を広め、戦後日本の文化の発展に大きく貢献しました。さらには戦前・戦中の日本人作曲家の作品を、新響との演奏によって復活させ、再評価につなげる功績も残しています。
その没後20年目の今年行われることとなった新潟公演では、芥川の代表作と、彼と同年代人である黛敏郎の作品、そして終生敬愛していたソ連の作曲家ショスタコーヴィチの交響曲を演奏いたします。
指揮は国内外で活躍する小松一彦氏。サンクトペテルブルグ・フィルハーモニーでも指揮をする氏にとってショスタコーヴィチの交響曲第5番は最も得意とする曲のひとつです。また、芥川作曲賞の指揮者を長年務めるなど、日本人作曲家の作品に造詣が深い指揮者でもあります。今回で新響との共演は13回目、息の合った熱い演奏をお届けします。
芥川と黛
「交響管絃楽のための音楽」は1950年芥川25歳の時の作品で、NHK放送開始25周年懸賞募集管弦楽曲に特賞入賞し、出世作となりました。哀愁のある第1楽章と明るく躍動的な第2楽章からなり、どことなく懐かしいけれどおしゃれで在りし日の芥川を思わせる魅力的な曲です。新響はこの曲をこれからも大切に演奏し続けていくでしょう。
黛敏郎は芥川と同じ伊福部昭の弟子で東京音楽学校(現東京藝術大学)の後輩でした。芥川、團伊玖磨と「三人の会」を結成し活動、「題名のない音楽会」の司会を務めるなど芥川と同様に世の中に大きな影響を与えた作曲家でした。
「BUGAKU(舞楽)」はニューヨーク・シティ・バレエの委嘱により1962年に作曲されました。黛は日本古来の文化をテーマにした曲を多く残していますが、舞楽とは舞を伴う雅楽のことで、この曲では笙(しょう)や篳篥(ひちりき)などの伝統的な雅楽器を用いず通常のオーケストラ編成で雅楽特有の響きが表現されています。雅楽の形態を踏襲しながらも前衛的でエネルギッシュな曲です。
ショスタコーヴィチの最高傑作
ショスタコーヴィチは20世紀を代表する大作曲家で15曲もの交響曲を残していますが、その中でも最高傑作とされるのが1937年に作曲された第5番です。人気があり、吹奏楽でもアレンジして演奏される機会が多いようです。
古典的な構成の中に人間の内面が表現されたこの曲は、美しく壮大、そして聴く者の魂を揺さぶります。「革命」という副題で呼ばれることもありますが、そういった政治的背景を抜きに、音楽を楽しんでいただきたい名曲です。
皆様のご来場をお待ちしています。